屋内消火栓とは屋内に設置される消火栓の事で、建物の廊下などに「消火栓」と書いてある箱があるのを見た事がある人もおられるでしょう。では、消火栓とは何かというと、消火活動に必要な水を供給する設備を言います。消火栓には1号消火栓や易操作1号消火栓、2号消火栓、広範囲2号消火栓といった種類があり、それぞれに使いやすさや放水量などに違いがあります。屋内消火栓は、主に延べ面積700㎡を超える防火対象物に設置されますが、木造や鉄骨造などの建物の構造によっては設置延面積が1400㎡、2100㎡と緩和されていきます。
屋内消火栓は、貯水槽などの水源、消火ポンプとモーターからなる加圧送水装置、発信機などの消火栓起動装置、開閉弁・ホース・ノズルなどからなる屋内消火栓箱、配管、弁類、非常電源などで構成されています。
ご存じない方も多いのですが、この屋内消火栓は一般の方が使うためのものです。決して消防署の人しか触ってはいけないものではありません。火事になった時に自分たちで消火するために設置されているもので、消防隊が火災現場に到着するまでの初期消火用なのです。火災が発生した時には屋内消火栓箱を開け、そこにあるホースを引っ張り出して水をまきます。つまり、消火器の規模の大きいものに過ぎません。ですから、屋内消火栓箱の前に荷物などを置かないように注意してください。いざという時のために、放水訓練などを行っておくと安心です。
屋内消火栓箱をご覧になったことがある人はおられると思いますが、その仕組みをご存知の方は少ないのではないでしょうか。屋内消火栓を自分たちが使うものだということもあまり知られていないので、その仕組みに関心がない人が多いのも仕方がないことかもしれませんね。屋内消火栓は、簡単に言うと貯水槽などに貯められている水をポンプとモーターの力によって送り出し、その水が配管の中を通って屋内消火栓箱の開閉弁からホース、ノズルを通り、送り出された水が出てくる、といったものです。
屋内消火栓箱の発信機を押すと、ポンプが起動します。この発信機は自動火災報知設備と兼用になっていることが多いので、非常ベルも鳴り出します。避難訓練の時に押すボタンですね。ポンプが起動すると、屋内消火栓箱についている赤色の表示灯は点灯から点滅に変わります。万一ポンプが動かなくても屋上には配管へ水を送るための補助水槽があり、そこから重力の力で水が出てきますから、多少は放水可能です。
屋内消火栓には4種類あります。それぞれの種類を把握し、自分の職場などに設置してある消火栓はどれかを知っておいて、いざという時に使えるようにしておきましょう。
1号消火栓は、主に工場や倉庫などに設置されている消火栓です。毎分130ℓ以上の水を放水する事が可能で、ホースが櫛にぶら下がっていて蛇腹状に収納されているものと、櫛にぶら下げずにホースを巻いているものがあります。使用の際には必ず二人以上で行う必要があり、一人がホースを櫛からすべて外して伸ばし、ノズルを火元に向けて構え、もう一人が消火栓の開閉弁を操作します。この消火栓を使うためには技術が必要なので、訓練をしておかなくてはいけません。
易操作1号消火栓は、放水量は1号消火栓と同じですが、一人でも操作が可能になっています。ホースをすべて伸ばさなくても放水が出来る点が、1号消火栓とは違います。
2号消火栓は、主にホテルや病院などの特定防火対象物に設置されている消火栓です。易操作1号消火栓と同じく一人でも操作可能で、放水量が毎分60ℓと少ないためノズルの保持が楽で操作しやすいので、訓練を受けていない人でも簡単に使用する事が出来ます。ただ、この消火栓は15mごとに設置しなくてはいけないので、台数が多くなってしまうというデメリットがあります(1号消火栓は25mごとの設置で良い)。また、通常は壁面に消火栓を設置することが多いのですが、天井に設置するタイプのものもあります。
最近になって出てきたのが広範囲型2号消火栓です。放水量は毎分80ℓと2号消火栓より少し多くなっており、1号消火栓と同じく25mごとの設置で良いので台数を少なくできるというメリットがあります。1号消火栓と2号消火栓の中間といった位置付けの消火栓です。
屋内消火栓を実際に設置する際の手順や、気を付けていることについて説明します。
まずは、法令基準によってどの階に屋内消火栓を設置するかを明確にします。面積などについて十分注意して設置階を決めます。
1号消火栓と2号消火栓では、設置にかかるコストも当然変わってきます。2号消火栓が使いやすいからといってそれを細かく配置すると、コストが大きくなってしまいますからよく検討する必要があります。
屋内消火栓を、指定半径距離で建物全体を包含できるように設置場所を決めます。この際、専用部分に配置してしまうと何かあった時に使用出来なくなる恐れ(専用部分の持ち主が不在など)があるので、廊下やホールといった共用部分に配置する必要があります。
また、所轄の消防によっては法令上の条件を満たしていても、屋内消火栓同士の歩行距離が長過ぎたりすると、それを短くするよう制限を設けているところもありますから、注意が必要です。
さらに、屋内消火栓を使用する際はホースを取り出すなどの動作を行う必要がありますが、それらの妨げにならないよう、消火栓の前にむやみに物を置かれたりしないような空間を選ぶ事も大切です。
屋内消火栓を機能させるためには、屋内消火栓箱以外に消火栓ポンプや水槽、補助水槽が必要になります。消火ポンプについては専用室などをつくり、その中に設置する場合が多いのですが、1階や地下に配置されるパターンが多くなっています。水槽は地中内に埋め込むことが多く、補助水槽は屋上に既製品を設置するパターンがほとんどです。これらの配置は、計画初期の段階でしっかり決めておかないと後々計画変更につながることもあるので、注意が必要です。
消防設備の点検は法令によって義務付けられていて、機器点検として6か月に1回、総合点検として1年に1回報告しなくてはいけません。この点検も有資格者が行う必要がありますし、適切に設備を維持するためには毎月の自主点検も行うことが好ましいので、ランニングコストも必要になります。この点もきっちり施主に説明しておかないと、後々のトラブルに繋がりかねません。