自動火災報知設備とは、自動的に火災を感知して知らせてくれる設備です。自動火災報知設備は、特定防火対象物なら延べ面積300㎡以上、非特定防火対象物なら延べ面積500㎡以上で設置対象となります。特定防火対象物とは、火災が発生した時に大きな被害が出ると考えられる場所のうち、政令で定められた最も消防用設備や防火設備の設置基準が厳しいところを指します。
自動火災報知設備は、天井に付いている感知器や廊下などにある赤い丸型のボタン式の発信機が構成部品になります。これが設置されていると、設置されていない建物よりも火災時の死亡率が下がるという統計も出ています。
自動火災報知設備には受信機と呼ばれる本体があり、そこから各部屋の感知器や廊下の発信機、表示灯、非常ベルなどに繋がっています。自動火災報知設備の作動は、部屋などに設置されている感知器が熱・煙などを感知するとその信号を受信機が受信し、蓄積状態になります。その状態が10~50秒程度続くと、火災と判断して非常ベルが鳴ります。受信機が火災の信号を受信しても蓄積状態になってすぐに作動しないのは誤作動を少なくするためで、発信機を押した場合はすぐに作動します。
最近の老人ホームなどでは、自動火災報知設備と119番通報装置が連動していて、自動火災報知設備が作動すると自動的に119番に通報されるようになっています。一般的な防火対象物の場合は、自動通報はされません。
火災を感知する感知器にもいくつか種類があります。代表的なもの3種類についてご説明しましょう。火事を見分ける大事な部分ですから、その特徴を知っておいてください。
熱感知器(差動式) |
この感知器は、急激な温度差を感知して作動するタイプのものです。形状は、東京ドームをひっくり返したようなものになります。冬場などは、感熱部分に掌をあてがうだけで作動してしまう場合もありますから、注意が必要です。
熱感知器(定温式) |
定温式の熱感知器は、温度が一定まで上がると作動します。およそ60~70℃前後が作動温度になっています。防水型の定温式感知器もあります。
煙感知式(光電式) |
光電式の煙感知器は、中に光を発する部分と光を受け取る部分があり、網の部分から煙が入るとその煙によって光が乱反射し、それを受光部が感知して作動します。
自動火災報知設備を設置する工事はどのように行われるのか、その一例をご紹介します。
火災報知設備も、部屋の広さや間取りなどによって設置するべき個数が変わってきます。エアコンの吹き出し口から1.5m以上離さないと機能障害を起こしてしまう危険性がありますから、注意が必要です。エアコンを移設する際にも気を付けておいてください。
図面や概要表、配線系統図と火災報知設備設置工事着工届を所轄の消防署に提出します。
火災報知設備の取り付け位置を基に、天井裏に電気の配管を通していきます。配線は、後に改修工事などが入る場合もありますから、出来るだけシンプルかつ確実に行う必要があります。見えないからといって雑な仕事をすることは出来ません。
室内に引き込まれた配線に、火災報知設備を取り付けます。その後、機能点検も行います。
工事が終わったら、所轄消防署に火災報知設備設置届を提出します。その後、消防署が検査に入り、問題なければ工事は完了です。
写真のように表示灯とベル、発信機が付いている箱を総合盤といいます。ご覧になったことがある方も多いでしょう。中には、避難訓練などでボタンを押した経験がある人もおられるかと思います。このボタンを押すとすぐに非常ベルが鳴り響きます。もちろん、人間がボタンを押した場合は誤作動を考える必要がないので蓄積状態にはなりません。また、この発信機は消火栓の起動ボタンと兼用になっている場合も多いので、不用意に押したりしないようにしてください。